Nikon   F3チタン

1    概括
   F3チタンは、F3ハイアイポイントボディーの次の外観各カバーを純チタン材を使用したものに変更したモデルです。F3発売の2年9月後の1982年12月にチタンカラーが発売され、更に、1年9月後の1984年9月にブラックが発売されています。
   以下、画像は上段がF3チタン(チタンカラー)、中段がF3チタン(ブラック)、下段がF3ハイアイポイントです。


⑴    ペンタカバー

⑵    左右上カバー


⑶    底カバー

⑷    裏ぶた


2    チタンとは
   ニコンF3チタンの説明書には次のような説明が書かれています。
   「チタンは黄銅の約1/2と軽く、鋼鉄に匹敵する強度を持ち、さらにステンレス鋼よりも耐触性に優れるなど、数々の特徴を持つ反面、大変加工の難しい金属です。」



3    仕様
   ニコンF3チタンの説明書には、「塗装及び重量を除いて全てF3ハイアイポイントと同じ」と書かれており、重量は約740g(ボディのみ)です。なお、F3ハイアイポイントの重量は約745g(ボディのみ)です。
   しかしながら、外部からも見えるところでは、フイルムカウンターの数字の色が異なっています。F3チタンは、白色で数字と目盛が印刷されており、目盛の12、24、36は赤色になっていました。一方、F3ハイアイポイントは、数字と目盛の印字は青色で、目盛の12、24、36は白色になっていました。

   また、正面向かって左側に通常のF3は「F3」と書いてあるところ、F3チタンは「F3/T」と書かれています。

   ほかに、内部の防滴機構が強化されているようです。
   なお、F3チタンのチタン外装のファインダーの型番は「DE-4」とされ、通常のハイアイポイントファインダー「DE-3」とは区別されていました。また、「DE-4」単体での販売はされていませんでした。



4    販売期間
区分 販売期間 備考
チタンカラー 1982年12月〜1988年 (注1)
ブラック 1984年9月〜2000年 (注2)
(注1) チタンカラーは、カメラ総合カタログ第91号(1988年3月発行)までは掲載がありますが、カメラ総合カタログ第93号(1988年9月発行)からは掲載が無くなっています。
(注2) ブラックは、カメラ総合カタログ第116号(2000年3月発行)までは掲載がありますが、メーカーカタログ最終版(2000.8.1)はF3ハイアイポイントのみとなっています。

5    価格
   価格は1989.4以降税別の価格です。これは同時期に消費税が導入されたことによります。次のとおり、F3/Tは、F3ハイアイポイントより約50,000円高価でした。    なお、Tはチタンカラーを意味し、Bはブラックを意味します。
年月 チタンの価格 HPの価格 備考
1983.03 195,000 149,000 Tのみ、(注3)
1985.02 195,000 149,000 Bは4,000高、(注4)
1989.04 182,000 136,000 Bのみ、(注5)
1992.11 200,000 149,000 Bのみ、(注6)
1996.02 220,000 164,000 Bのみ、(注7)
1997.09 263,000 194,000 Bのみ、(注8)
(注3)カメラ総合カタログ第76号(1983年3月発行)
(注4)カメラ総合カタログ第82号(1985年2月発行)
(注5)メーカーカタログ1989.04.01版

(注6)メーカーカタログ1992.11.10版

(注7)メーカーカタログ1996.02.21版

(注8)メーカーカタログ1997.09.01版


6    化粧箱
   当初はプラスチックケースが付いた豪華な仕様でしたが、後に普通のF3と同じ包装になりました。
   外側の化粧箱は、このプラスチックケースが入るのでだいぶ大ぶりな大きさとなっています。

   そして、プラスチックケースの中には、通常のF3の梱包に使われる発泡スチロールと、隙間用の薄い発泡スチロールが入っています。

   このプラスチックケースですが、当時、F3チタンはカメラ店のショーウインドウにプラスチックケースごと飾られていて、カメラ小僧の憧れでした。カメラ店で買えもしないF3チタンをずっと眺めていた当時を思い出します。




7    製造時期判別上の考察
   F3の蝶番部に永久不滅インクで印刷された4個の英数字で製造された年月等が確認出来る事は一般に広く知られています。
   それによると、左から次の意味となっているそうです。
1桁目 製造月
2桁目 製造年
3桁目 種類
4桁目 仕様
   例えば、ウチのF3チタンチタンカラー(以下、「白チタン」といいます。)は「63TA」なので、それぞれ次の意味となり、繋げると83年6月製造のチタンA仕様という意味になります。
1桁目 製造月 6月
2桁目 製造年 83年
3桁目 種類 チタン
4桁目 仕様 A仕様
   ここで問題になるのは2桁目の製造年です。
   F3チタンブラック(以下、「黒チタン」といいます。)の場合、販売期間が1984年から2000年まで17年間だったので、例えば、二桁目が「4」の場合、1984年なのか1994年なのかわかりません。
   なお、白チタンの場合、販売期間は1982年から1988年までだったのでこの問題は生じません。
   そこで参考になるのが手元にある黒チタンです。それには「D5TH」と印刷されていますので、それぞれ次の意味となり、繋げると85年12月か95年12月製造のチタンH仕様という意味になりますが、製造年が特定出来ません。
1桁目 製造月 12月
2桁目 製造年 85年か95年
3桁目 種類 チタン
4桁目 仕様 H仕様
   ここで、製造年を特定するヒントとなるのがプライスカードです。この頃は店舗での陳列用にプライスカードが同梱されていました。そこでこの個体のプライスカードを見ると20万円となっています。黒チタンが20万円で販売されていたのは、メーカー作成のカタログを見ると1992年11月から1996年2月です。
   これをこの個体に当てはめると、②から85年か95年なのですが、プライスカードから95年であると特定出来ます。繋げると95年12月製造のチタンT仕様となります。
   次に、この結果を他の個体にどのように当てはめるかですが、上の個体の製造番号は8525590です。ウチにはもう一台黒チタンがあってこちらの製造番号は8519742と上の個体より番号が若いです。便宜上、ここから8519742の黒チタンを「黒①」、8525590の黒チタンを「黒②」と呼びます。
   黒①の印刷は「09TC」となっています。これを同様に見ていくと次のとおりとなり、黒チタンの販売期間が1984年から2000年までだったので、またもや製造年が特定出来ません。
1桁目 製造月 10月
2桁目 製造年 89年か99年
3桁目 種類 チタン
4桁目 仕様 C仕様
   ここで根拠はありませんが、製造番号と仕様は常に大きくなっていくと仮定します。そうすると、黒①は黒②より製造番号も仕様も若いので、黒②の②は95年の意味でしたから、黒①の②は89年となります。繋げると89年10月製造のチタンC仕様となります。
   そこで、黒①と黒②を並べると次のようになりますので、他の個体も製造時期を調べる時には参考になるかと思います。
区分 黒① 黒②
製造番号 8519742 8525590
4桁印刷 09TC D5TH
製造年月 1989.10 1995.12



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